民泊で「赤鬼」騒動も…外国人に侵食されるマンション 管理人の悲鳴

AERA 2015年11月30日号

自宅マンションに突如、外国人がひっきりなしにやってくる。「民泊」仲介サイトによるコミュニティー侵食の始まりだ。住民や管理組合はどう対応したらいいのか。

post-24-photo

11月上旬、東京・新宿の賃貸マンションの一室。床にはガラス片やポリ袋などのゴミが散乱しているのに、オーナーの井上義雄さん(75)はホッとため息をつく。

「ようやく出ていってもらえましたよ。退去を求めてから2カ月近く。こんなことは二度と起きないでほしいが、完全に防ぐのも難しい気がします」

親が遺した土地に、オートロック付きのマンションを建てたのは8年前。十数室ある部屋はどれも25平方メートル前後で、家賃は9万円台だ。身元のしっかりした居住者を選ぶことで、女性にも安心して暮らしてもらい、資産価値の維持に努めてきた。ただ、「Airbnb(エアビーアンドビー)」の存在を知らないと、未然に「被害」を食い止めるのは難しい──。

井上さんの悲劇について詳述する前に、民泊とAirbnbについておさらいしておこう。旅館業法は、お金をもらって人を繰り返し泊めるには営業許可が必要だと定めている。許可を得るには、住宅地のように営業禁止の地域を避け、建築の基準も満たさないといけない。普通のマンションではまず無理。

だが、東京や大阪など都市部では、急増する訪日外国人の需要を当て込み、マンションの空室を使った民泊が横行している。それらの多くは、旅館業法違反(無許可営業)という刑罰をともなう犯罪に問われかねないにもかかわらず、だ。誰にでも簡単に部屋を貸し出せるようにした「立役者」が、仲介サイトのAirbnbだ。

2008年に米国で始まったAirbnbは、ネット上で貸したい部屋や建物と、借りたい旅行者を引き合わせてくれる。ホームステイのように住民と交流でき、地元の雰囲気を楽しめる魅力をうたいながら、世界190以上の国・地域で展開、手数料収入で急成長した。日本では10月時点で1万8千件が紹介され、前年同期の3倍を超えた。ただ、都市部では、自宅でもないマンションの一室を投資目的で貸し出す例が増えている。

井上さんに話を戻そう。最初の異変は、8月8日に起きた。井上さんは週に何度かマンションに足を運ぶ。そこにアジア人男性2人が現れ、オートロックの鍵を開けて2階の部屋へ入っていった。2週間前、大手金融グループ「HSBC」の従業員だという中国人X氏が、「自分が営む貿易会社の駐在員の寮にする」と説明して借り上げた5室の一つ。入居者5人分の身分証明書も預かったが、2人が含まれるかはわからない。

「ドゥーユーノウ、X?」

決して得意ではない英語で、おずおず声をかける。返ってきた言葉は理解できた。「アブソリュートリー・ノー(まったく知らないよ)」。部屋の鍵を「ミスター・ブライトン」から受け取ったことも聞き取れたが、どこの誰だかわからない。彼らは3泊ほどで出ていった。

その後も外国人は続々とやってきた。会うたびに声をかけ、少しずつ情報を引き出す。ネットでブライトンにカネを払い、郵便ポストの暗証番号を教わって鍵を取り出し、何泊かして帰る。そんな仕組みがおぼろげながら見えてきた。さらにその中でこんなエピソードも出てきた。

「住民の女性からは『赤い鬼が出た』と言われた。聞けば、夜中にドンドンと戸をたたかれ、のぞき穴から見ると、酔って真っ赤になった白人男性がいたと。放っておけば他の住民まで逃げ出しかねないと思いました」

転機は9月15日に訪れた。泊まりに来た中国人が、手にした紙を見せてくれた。マンションの住所や部屋番号とともに、2人で1泊約1万2千円を払って予約したことが記されている。そこで初めて「Airbnb」の文字を見つけた。ネットで検索して調べ、ようやく全容をつかむに至った。

「その紙とともに、転貸禁止の契約に違反するから退去してくれと不動産会社経由で要求した。相手は『スタッフが勝手にやった。二度とやらない』などと釈明したが、その後も状況は変わらず、明け渡されるまで何度か警告を繰り返した」

※AERA 2015年11月30日号より抜粋

参考
http://goo.gl/yb9hO8

最新NEWS